2020年12月31日現在において、協和キリングループが特定した重要リスクを以下に記載しています。当社グループにおける「リスク」とは、「経営目標に与える不確かさの影響」をいい、脅威と機会を含みます。

 

なお、社内外の環境変化により想定していないリスクが発生する可能性があります。またその他にも、ここで記載していない国内外製薬業界の事業活動に潜在するリスクとして、知的財産権に関するリスク、副作用に関するリスク、訴訟に関するリスク、製品競合・特許権満了に関するリスク、原燃料価格の変動リスク、為替・金融市場の変動リスク、カントリーリスクなど、当社グループの経営成績および財政状態等に悪影響を及ぼす可能性のあるさまざまなリスクがあり、これらに限定されるものではありません。

グローバル戦略品の価値最大化に関するリスク

リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
 当社グループは、X染色体連鎖性低リン血症治療剤Crysvita(日本製品名:クリースビータ)、抗悪性腫瘍剤Poteligeo(日本製品名:ポテリジオ)およびパーキンソン病治療剤Nourianz(日本製品名:ノウリアスト)をグローバル戦略品と位置づけ、これらの価値最大化を進めています。しかしながら、上市準備が遅延し事業エリア拡大が遅れる、潜在患者の掘り起しの難航等で市場への浸透が進まない、新規上市国での価格が想定と乖離して売上が予測から大きく下振れするまたは品質や製造トラブルの発生等により安定供給に支障が生じた場合は、経営目標の達成が困難になる可能性があります。

 

主な対策
 グローバル戦略品の価値最大化に向けては、市場浸透施策や欧米を中心とした事業地域の拡大を進めています。また、グローバルレベルで各部門や関係会社間のシームレスな連携を可能にするグローバルマネジメント体制の強化を図っています。これらを確実に実現するための基盤として、強固な生産体制を確立するとともに、品質保証体制の強化が重要になりますが、「製品品質に関するリスク」および「生産・安定供給に関するリスク」の主な対策に記載のとおり、重要リスクとして取り組んでいます。

研究開発に関するリスク

リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
 研究開発では、今まで培った技術に関する蓄積と疾患に関する知見を融合させることにより、新たな医療価値の創造と創薬のさらなるスピードアップを目指しています。技術戦略としては次世代の抗体技術などのさまざまなモダリティを活用したプラットフォームの構築を、疾患戦略としては疾患バイオロジーの知見と技術を融合させてアンメットニーズを満たす新薬開発を続けていきます。しかしながら、長期間にわたる新薬の研究開発の過程において、期待どおりの有効性が認められない場合や安全性などの理由により研究開発の継続を断念しなければならない場合には、パイプラインの充実ができず、将来の成長性と収益性が低下する可能性があります。

 

主な対策
 当社グループは、次期グローバル候補品など次世代を担う新薬パイプラインを強化するために、研究開発への積極的な投資(研究開発費率18~20%を目処)を進めていきます。また、自社での研究に加え、産官学すべてを視野に入れたオープンイノベーション創薬、基盤技術やパイプラインの獲得に向けた戦略的パートナリング活動(導入、提携等)にも力を入れています。2020年には武田薬品工業(株)の創薬プラットフォーム事業をスピンアウトして設立された創薬ソリューションプロバイダーであるAxcelead Drug Discovery Partners(株)と協業を開始しました。協業により、同社が長年培ってきた低分子創薬の幅広い技術や経験と当社の持つ革新的な創薬技術を融合させることで、画期的な研究開発パイプラインの拡張を目指しています。また人工知能や機械学習のアプリケーションを提供する米国のInveniAI社との共同研究提携を拡大し、当社グループが別途独自に開発した次世代抗体技術に適合する創薬標的分子および適応疾患探索を行っていきます。

医療費抑制策に関するリスク

リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
 国内外において医療費抑制の圧力が強まっており、先発医薬品の価格引下げに加え、後発医薬品の使用促進など医療制度改革の動向は、当社グループの経営成績および財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、このような状況下においても革新的新薬は高く評価されますが、有用性・革新性を有する新薬の開発が停滞する場合は、将来の成長性と収益性が低下する可能性があります。

 

主な対策
 各国の政策動向を把握しながら、開発品目の上市後の価格を予測し、売上収益への影響を評価しています。また、有用性や革新性を訴求できる戦略的な承認申請パッケージ策定を検討しています。

自社およびグループ会社管理に関するリスク

リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
 2019年に発生した抗悪性腫瘍剤(マイトマイシンC)の自主回収について、2020年1月に第三者主導のグループ調査委員会による調査報告書を受領し、再発防止策を策定いたしました。経営の最優先事項として、強固な品質保証体制の構築、リスクマネジメントの改善、企業文化の改革の3点を柱とする改革イニシアチブを発足し、再発防止に向けグループ全体のガバナンスの強化に取り組んでいます。これらの取り組みが十分に機能しない場合、リスクの顕在化による生産活動や販売活動等の制限や停止、製薬会社としての信頼の失墜等につながる可能性があります。

 

主な対策
 リスクマネジメントの改善では全社的リスクマネジメント強化のための役員や経営職を対象としたワークショップ、社会と事業の持続性の視点から中長期的に解決すべきリスクの洗い出しのためのマテリアリティの特定等を通じて、新たなリスクや潜在化するリスクへの対応力向上を図っています。また、国内外各地域においてクライシス演習を実施し、危機管理能力向上を目指しています。なお、強固な品質保証体制の構築は「製品品質に関するリスク」に、企業文化の改革は「コンプライアンスに関するリスク」にそれぞれ記載しています。

製品品質に関するリスク

リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
 医薬品製造には、GMP(Good Manufacturing Practice:医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準)に適合した設備(ハード)と手順や人材(ソフト)が求められます。各国当局のGMP査察や社内監査において、GMP上の重大な問題が見つかった場合には規制当局より製造停止を指示される可能性があります。また、使用する原料や製造工程において、何らかの原因により製品の安全性や品質に懸念が生じた場合は、製品回収が発生する可能性があります。

 

主な対策
 品質保証の機能は社長直属のグローバルQAヘッドが、グローバル品質保証委員会、定期および臨時のグローバル製品協議会等にて、各地域統括会社から報告される重大な品質関連事項についての協議、新たな製造場所の選定における品質面からの評価、製品品質の定期的レビュー、課題別のグローバルタスクフォースの活動状況のレビュー、監査で確認された課題およびその対応状況のモニタリング等を通じて、各地域の品質保証活動を直接指導する体制を構築しています。また、グローバルGxP監査&規制コンプライアンス部門を発足させ、独立した専門の監査チームによる自社および委託先への品質監査の強化を図っています。さらに、膨大な品質保証業務に関する情報をグローバルレベルで適切に管理、活用し、プロセスと信頼性を継続的に改善するために、電子品質マネジメントシステム(eQMS)の導入を進めており、主要な品質マネジメントプロセス(教育訓練、文書管理、逸脱、苦情、是正および予防措置、変更、監査等)の電子的管理を行っていきます。

生産・安定供給に関するリスク

リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
 当社グループでは、グローバル戦略品が売上に大きく貢献し、2020年度には当社の海外売上収益比率は48%にまで達しました。今後さらに海外売上収益比率が高まることが予想されますが、地域別のより詳細で精度の高い需要予測ができない場合、自社工場のみならず委託先を含むサプライヤーとの連携によっても供給能力が向上できない場合、当社製品の安定供給に支障が生じ、製薬会社としての信頼の失墜や売上収益の低下または承認申請遅延等が生じる可能性があります。

 

主な対策
 製品の売上情報やニーズの変化を速やかに把握して需要予測の精度を高めるとともに、需要と供給を利益性の観点でバランスさせ事業計画に沿った調整を迅速に行うためのS&OP(Sales and Operations Planning)と呼ばれるプロセスをスタートさせて、サプライチェーン全体の最適化を行っています。また、急激な需要増や需給逼迫にも対応できるように、委託先の拡充、自社工場への設備投資、製造作業効率化のためのデジタル化推進、製造部門の増員と教育システムの充実を進めています。

取引先・委託先管理に関するリスク

リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
 当社グループは、他社との共同開発、共同販売、技術提携および合弁会社設立等の提携、または医薬品の原料供給、製造、物流、販売等に関して国内外のサプライヤーへ業務を委託しています。しかしながら、サプライヤーにて人権、法令遵守、環境および情報セキュリティ等の問題が発生し、提携や業務委託による成果物が得られなかった場合や提携解消等が発生した場合、成果物の品質に問題が発生した場合には、当社製品の安定供給、物流や販売等に支障が生じ、製薬会社としての信頼の失墜や売上収益の低下または承認申請遅延等が生じる可能性があります。

 

主な対策
 当社グループでは、取引契約書等にコンプライアンス条項を明記し、サプライヤーに対してコンプライアンスの徹底を求めています。また、サプライチェーンを構成するサプライヤーの心構えや行動を「サプライヤー行動指針」として定め、サプライヤーへの理解を進めています。さらに、サプライヤー行動指針に記載された項目についてアンケートを実施し、結果をサプライヤーにフィードバックするとともに、コンプライアンス活動の実態把握や、その取り組み状況の改善を促す活動にも取り組んでいます。なお、アンケート結果やサプライヤーの改善活動に基づき、社外のサプライヤーデータベースから得られたリスク情報と合わせて、サプライヤーのリスクの客観的評価を実施しています。

情報セキュリティに関するリスク

リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
 当社グループは、各種情報システムを使用しているため、システムへの不正アクセスやサイバー攻撃を受けた場合は、システムの停止や秘密情報が社外に漏洩する可能性があります。また、取引先がサイバー攻撃を受けた場合にも、当社グループの秘密情報や個人データの漏洩、事業活動の停止、ブランド棄損などの被害につながる可能性があります。「感染症に関するリスク」の主な対策でも記載していますが、在宅勤務の促進により生産性が向上する一方で、自宅の通信環境の利用や一人業務が増加するため、盗聴、サイバー攻撃、メール誤送信のリスクが高まり、情報漏洩が発生する可能性があります。

 

主な対策
 当社グループでは、年々多様化かつ巧妙化するサイバーセキュリティ上の脅威に対する技術的な対策に加え、インシデント発生時の初動対応の処理フローや手順書をプレイブックとしてまとめるなど、情報セキュリティレベルを向上するための取り組みを進めています。さらに取引先に対しても、セキュリティの対応状況を確認するなどリスク低減のための取り組みを進めています。2020年には、万一の場合に迅速に対処して被害を最小化するための取り組みとして、GDPR(General Data Protection Regulation:EU一般データ保護規則)の対象となる個人データ漏洩時の対応訓練やグローバルサイバーインシデント対応訓練を実施しました。
 在宅勤務における情報セキュリティ対策としては、セキュリティ注意喚起の通知を発信したり、情報セキュリティ事故を他山の石として共有して職場の点検につなげたり、リモート通信により複数の目を通すプロセスを職場単位で進めています。

コンプライアンスに関するリスク

リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
 医薬品の研究開発およびその製造販売や輸出入には遵守すべき各種の法令等の規制があります。また、医薬品のプロモーションには各国の法規制に加えて業界の自主規範があり、製薬会社にはその遵守が強く要請されています。これらの法令等の規制や自主規範を遵守できなかったことにより、これらに基づく制裁を受け、新製品開発の遅延や中止、生産活動や販売活動等の制限や停止、製薬会社としての信頼の失墜等につながる可能性があります。

 

主な対策
 当社グループではコンプライアンスを法令遵守だけではなく、社会の要請をいち早く察知し、倫理的に行動することと捉え、役員および従業員一人ひとりがとるべき全般的な行動を「協和キリングループ行動規範」として定めています。また、各種法令等の規制や自主規範を遵守するための体制を構築するとともに、教育研修を継続的に実施しています。コンプライアンスの遵守状況と重要課題への対策の進捗状況については、四半期ごとに開催される各リージョナルCSR委員会や年1回開催されるグループCSR委員会にて議論し、取締役会に報告することで継続的な改善を進めています。また、行動規範に反する行為や当社グループのブランド価値を著しく損ねる行為を予防、早期発見、是正するために、内部通報窓口を設けています。
 社員一人ひとりが当社グループの価値観および行動規範に基づき高い倫理観をもって行動することを徹底するために、2020年には従業員アンケートや役員討議を通じて集約した改めるべき企業文化の背景を整理し、行動を変容するための取り組みを展開しています。

人的資源に関するリスク

リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
 当社グループは、多様な背景を持つ人たちが、自らの持つ能力を発揮して国内外の事業活動を推進するグローバルマネジメント体制の定着を進めていますが、グローバルマネジメント体制を担う人材を育成、採用できない場合は、当社事業活動の継続に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

主な対策
 当社グループは、人材をイノベーションの源泉と捉え、多様な背景を持つ社員一人ひとりの能力を最大限引き出し、変革に挑み新しい価値を創造し続ける人材育成を計画し、実行しています。将来のあるべき組織体制を想定し、現在の人員との需給ギャップを把握するとともに、一人ひとりの能力を最大限引き出すための挑戦機会の提供をすべての部門で議論するため、タレントレビュー会議を設置しています。また、次世代を担う経営人材育成のために、候補人材プールに対して、アセスメント、選抜研修の受講、早期抜擢や海外派遣を含むタフアサインメントなどを組み合わせた育成施策を推進しています。

環境に関するリスク

リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
 当社グループでは気候変動は事業活動に影響を与える課題と認識しており、気候変動に伴う異常気象による原材料価格の高騰や風水害の多発が、当社の製品の安定供給に影響を及ぼす可能性があります。さらに、将来、炭素税の導入や環境規制強化への対応などによる新たなコストの発生や、温室効果ガス削減目標を達成できない場合には当社グループのブランド価値が低下する可能性があります。

 

主な対策
 現在、中長期的な温室効果ガス削減のためのロードマップを作成しています。中期的には、省エネの取り組みと再生可能エネルギーの導入や拡大を中心に温室効果ガス削減を推進する予定です。2020年には、温室効果ガスを排出しない100%水力発電由来の電力「アクアプレミアム」*を高崎工場に導入し、高崎工場の電力の75%を切り替えました。今後、他の事業場にも再生可能エネルギーの導入を検討していき、2040年までに使用電力の再生可能エネルギー100%化を目指します。さらに、2050年に向けて長期的には、工場設備等における化石燃料から水素等へのエネルギー転換を進めるとともに、サプライチェーンにも温室効果ガス削減を働きかけ、バリューチェーン全体での温室効果ガス排出量ネットゼロを目指します。また、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同も表明しており、気候変動が事業に及ぼすリスクと機会、それらが及ぼす影響を見極め、TCFDの提言に沿った情報開示の拡充を進めていきます。

* 東京電力エナジーパートナー(株)が提供する料金プラン

自然災害に関するリスク

リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
 各地で起こりうる地震や台風などの自然災害により、当社グループの本社、工場、研究所、事業所等が閉鎖または事業活動が停滞し、創薬研究や臨床開発の進展、製品の安定供給、安全性情報の収集、製品の情報提供などに影響が生じ、当社グループの経営成績および財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

主な対策
 当社グループでは、災害発生時の従業員とその家族の安全を確保するため各拠点と連携して防災計画を立て、安否確認訓練や備品の補充と点検を定期的に進めています。また、通常の事業活動が継続困難な状況に陥った場合においても、医薬品の供給、安全性の監視および情報提供を継続するために、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)を策定しています。2020年には日本を横断する超大型台風の発生を想定したBCP演習を実施しました。演習を通して課題を抽出し、BCPの継続的な改善を進めています。

感染症に関するリスク

リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
 2020年年初から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界各地に広がりパンデミックとなりました。パンデミックの規模によっては、当社グループの本社、工場、研究所、事業所内でクラスターの発生による閉鎖または事業活動の停止、原材料調達先であるサプライヤーの操業の停止や物流への影響が発生する可能性が考えられます。医療機関に混乱が生じた場合等には製品の安定供給や安全性情報の収集に支障が発生、医療従事者への製品の情報提供や臨床試験の進行が遅延する可能性があります。また、各国にて行政機関に影響が生じた場合には、承認申請や薬価交渉の遅れにより新薬の上市が遅延する可能性もあります。今後、このような事態が発生した場合、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

主な対策
 COVID-19に対し、当社グループでは2020年1月に対策本部を立ち上げて事業継続に向けた対応を実施してきました。感染リスクの低減を第一に、在宅でも可能な業務は在宅勤務を基本とし、ウェブミーティングツールを積極的に活用して社内外とのコミュニケーションを取りながら業務を進めると同時に、製造部門をはじめ出社対応が必要な場合は、検温やマスクの着用、ソーシャルディスタンスの確保、居室の分離、空気清浄機の利用など、細心の注意を払って業務にあたっています。また、感染者発生時の対応シナリオ等、感染拡大防止に向けての対策も慎重に準備しています。海外事業所においても在宅勤務を基本として活動していますが、通常業務再開に向けてオンライントレーニングを適宜実施し、またデジタルプロモーション活動への移行を進めています。このような在宅勤務での取り組みを働き方改革と位置づけ、デジタル化促進とともに、生産性向上につなげていきます。