2025年12月31日現在において、協和キリングループが特定した重要リスクを以下に記載しています。当社グループにおける「リスク」とは、「経営目標に与える不確かさの影響」をいい、脅威と機会を含みます。
なお、社内外の環境変化により想定していないリスクが発生する可能性があります。またその他にも、ここで記載していない国内外製薬業界の事業活動に潜在するリスクとして、知的財産権に関するリスク、副作用に関するリスク、訴訟に関するリスク、製品競合・特許権満了に関するリスク、原燃料価格の変動リスク、為替・金融市場の変動リスク、カントリーリスクなど、当社グループの経営成績および財政状態等に悪影響を及ぼす可能性のあるさまざまなリスクがあり、これらに限定されるものではありません。
リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
当当社グループは、研究開発、製造、販売等に関わる重要情報システムやネットワークを、グローバルに多拠点で運用しています。これらは患者さん情報、研究開発データ、製造ノウハウ、契約や経営情報など、極めて機密性の高いデータを含みます。近年、ランサムウェアや標的型攻撃などのサイバー攻撃は高度化・巧妙化し、ライフサイエンス分野は高い攻撃対象となっています。セキュリティ対策(アクセス制御、暗号化、脆弱性管理、監視、バックアップ等)が不十分な場合、システム停止や障害発生、情報漏えいなどが起き、事業継続が不可能になる事態が生じ得ます。これにより、法令違反や制裁金、訴訟、重大な経済的損失、社会的信用の低下、競争力の喪失などの影響を受けます。また、地域ごとのセキュリティ標準や対応方針の差異、統一的なガバナンス不在、保険補償の限界なども被害拡大の要因となります。
主な対策
現在、全地域で常勤スタッフによる監視体制を整えており、サポートを提供しています。北米・EMEA・日本ではランサムウェア防御技術を導入し、また内部脆弱性管理を継続的に実施に加え、年1回の外部ペネトレーションテストも実施しています。さらに、各地域でMSSP(マネージドセキュリティサービスプロバイダー)による監視を行い、資産管理ツールを用いた資産発見・管理、TPRM(サードパーティリスクマネジメント)評価、年次のグローバル・地域別サイバー演習、フィッシング対策訓練も実施しています。今後はMSSPサービスの統合化と単一テナント運用による迅速な対応、グローバルセキュリティオペレーションモデルの構築、TPRM標準化、製造部門のオペレーションテクノロジー(OT)セキュリティ強化を予定しています。また、ERMプログラムを導入し、全地域のリスクをモニタリングしていきます。
リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
当社グループは、バイオ医薬品を含む多様なモダリティの製品・治験薬を製造し、国内外に供給しています。製造・品質に関するトラブルや原材料調達不安、急激な需要変動、委託先の不具合、自然災害、地政学リスク、システム障害などは、供給に重大な影響を及ぼす恐れがあります。特に重要品目で供給不足や出荷制限が発生すると、患者さんへの治療継続が困難となり、社会的信用失墜、受注減、売上減少、罰則、訴訟など経済的損失が生じます。さらに、新しいモダリティやデバイスへの対応力不足、生産拠点の一極集中や老朽化、設備投資の戦略整合性欠如も中長期的な供給安定性を損なう恐れがあります。
主な対策
適正在庫の確保、自社生産体制の整備・拡充(高崎工場HB7棟・サンフォード工場)、重要製品のデュアルソーシング体制構築、CDMO管理強化、災害時における影響の早期把握、原材料・資材の安定確保やサプライヤーマネジメント改善、逸脱・変更管理プロセス改善、新技術の開発・活用促進などに取組んでいます。今後はサプライチェーン全体のリスク特定と対応シナリオ策定、長期的な戦略に基づく供給体制構築、製造・品質リスクの早期把握のためのモニタリング強化、DX活用によるオペレーション改革などを計画しています。今後、インシデント数、査察時の重大指摘数、計画達成度などをモニタリングしていきます。
リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
当社グループは原材料・委託製造・流通等、重要な事業プロセスを多数のビジネスパートナーに依存しています。これらのビジネスパートナーに起因する人権・環境問題(強制労働・児童労働、温室効果ガス排出等)、贈収賄や腐敗行為、情報セキュリティ侵害、規制違反などのリスクは、管理体制が不十分であると顕在化しやすくなります。特に責任部署やモニタリングプロセスが曖昧な場合、デュー・デリジェンス(DD)の実施漏れや契約・監査未整備が生じ、高リスクパートナーに対して適切な評価・対応ができないまま取引を継続する事態が発生します。インシデントが発生すれば、事業の継続困難、罰金・制裁金の賦課、社会的信用の失墜、金銭的損失等の影響に加え、膨大な人的・物的リソースを突発対応に投入せざるを得なくなります。
主な対策
既存の各リージョンでのDD、人権DDにおけるインタビューとテーマ検討等の活動に加え、現状では、グループ全体のビジネスパートナーに係る基本方針・規程の策定による管理概要の明文化、安定供給に関わるパートナーの優先的なDD対象選定、グローバルでの運用プロセスの明文化に向けた各リージョンの管理体制現状確認を行っています。また、PSCI (Pharmaceutical Supply Chain Initiative)への加盟等を通じ、他社のDD状況・業界トレンドを踏まえた組織改善も進めています。今後はDD対象選定基準や優先リスク評価基準の策定、SAQ(自己評価質問表)実施、リスク評価指針・対応手引き作成、高リスクパートナーへのモニタリング徹底、外部開示にも対応可能な監査体制の設計・実施を進めます。契約時・契約後のモニタリング網羅性向上、サプライヤー情報のグローバル一元管理も計画し、優先パートナーに対するアセスメント完了率や低減対策実施率などをモニタリングしていきます。
リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
研究開発から上市までの開発品・製品ポートフォリオは当社の持続的成長の基盤です。疾患領域別の投資方針(自社単独での価値創造・提供と他社との戦略的パートナリングによる価値最大化)を設定していますが、後期開発品への投資拡大、初期パイプライン偏在、パートナリング交渉難航等により、将来の売上・利益の均衡が崩れる恐れがあります。短・中・長期視点での不十分な議論や財務観点との整合性欠如は、投資判断誤りや開発停滞を招き、株価下落、中長期的収益性悪化、機会損失につながります。
主な対策
現状、グローバル経営戦略会議等においてポートフォリオ分析(売上・利益予測、感度分析、シナリオ別成長予測、重大な影響要因=スイングファクター分析)を定期的に実施し、CxOレベルで現状と将来シナリオを共有しています。今後は四半期ごとのプロダクトポートフォリオマネジメント会議を設置し、財務視点を含むシナリオ分析に基づく戦略方向性の認識一致を図ります。また、議論内容を開発実務に迅速反映し、スイングファクターに関連したワーストケースシナリオへの事前対応策などをモニタリングしていきます。
リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
当社グループは、急速に環境変化する製薬業界において、持続的な成長と競争優位性を実現するため、高度な専門性、多様性、機動性を備えた組織と人材の確保が必須です。しかし、必要なケイパビリティが現状と乖離しているにもかかわらず、そのギャップを正しく認識し、計画的に是正する取組みが遅れると、イノベーションの創出が停滞し競争力が低下する恐れがあります。加えて、企業文化(KABEGOE Culture)の醸成が不十分である場合、優秀な人材の採用・定着が困難になり、エンゲージメントや生産性低下を招き、グローバル戦略遂行やビジョン達成の障害となります。具体的には、グローバル×ローカルの一貫した人材戦略の欠如、People Leader(管理者層)の役割定義・期待値の不明確さ、Total Reward(報酬政策)やキャリア機会の競争力不足などが長期的な人材流出につながるほか、人材育成が場当たり的になり戦略人材のパイプライン構築が進まないという影響も顕著です。
主な対策
当社は、こうしたケイパビリティギャップの是正に向けて、人材マネジメント基盤の強化に着手しています。人事組織内にVirtual Global Sub-functionを設け、機能横断・地域横断の戦略推進体制を整備するとともに、グローバルな後継者計画(Global Succession Planning)を導入し、各ファンクションにおける次世代リーダー候補とその育成方針を明確化しています。さらに、研究開発領域には、価値創造型人材像の定義と人材育成施策を導入しました。企業文化面では、Vision 2030の達成に向けてKABEGOE Principlesを継続的に社内へ浸透させ、Global HR Operation Model等の整備を通じた、国や部門を越えたタレントマネジメントの基盤構築を進めています。今後は、People Leaderへの期待役割を明確化し、その実現を支援する育成施策や、Total Reward Policyの明確化・報酬制度の再設計、加えて認証プログラムの強化に注力していきます。また、オペレーティングモデル変革を支えるため、社内表彰制度の刷新や部門横断の価値創出活動を拡充し、社員一人ひとりが変化を実感できる企業文化の発展を図っていきます。
リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
医療費の高騰、薬価抑制圧力、費用対効果評価(HTA)の重視などにより、医薬品の保険償還や価格設定は厳格化しています。患者、Payer(保険者)、当局のニーズを十分に反映しない開発戦略や、経済的価値の検証プロセス不足により、製品へのアクセスが遅延・制限されるリスクがあります。開発初期から市場アクセスや経済価値戦略を組み込む仕組み、具体的には、欧州HTA基準を満たす試験設計、費用対効果評価に対応しうる体制・人材、国ごとの価格ルール・交渉文化の違いへの柔軟対応力が必要です。これらが不足すると、上市後の価格・アクセス条件が不利となり、収益性や成長性が著しく低下します。
主な対策
当社は、開発初期段階からアクセス及び価値最大化戦略を製品戦略書やTarget Product Profile(TPP)に組み込み、研究開発委員会で戦略の整合性を確認しています。先行開発品や類似領域で得た知見を疾患領域チームのCrossfunctionalレビューにより共有し、欧州HTA基準を満たすPhaseⅢ試験設計の推進、費用対効果評価に対応可能な価格設定システムの改訂を行っています。さらに、主要製品では欧州共同臨床評価(JCA)への計画的対応を進め、米国及び欧州市場での交渉力強化に取組んでいます。併せて、国内の費用対効果評価への継続対応を可能とする体制・人材育成を行い、政府渉外部門、医療経済、Pharmacy Benefit Management(PBM)、ペイヤー対応部門等と連携しながら、各国事情に適合した価値最大化施策の標準化を目指しています。
リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
日本事業の中核を担う長期収載品に関する製品ライフサイクル戦略の実効が遅延した場合、ポートフォリオの改善が困難となり、高コスト構造が固定化する可能性があります。さらに、新製品の自社開発や国内導入が計画どおり進まない場合、日本市場における競争力が低下し、グループ全体の収益に影響を及ぼす恐れがあります。また、新薬の上市計画が遅延した場合、目標利益を大きく下回る可能性があり、持続的成長モデルへの転換が急務となります。
主な対策
当社は、製品ライフサイクル戦略の実行に向け、早期段階からパートナー企業やCDMOとの情報共有を進め、承継活動における透明性の向上と意思決定の迅速化を図っています。承継契約に関しては、法務デュー・デリジェンス及び関連契約の精査を実施し、組織間の連携を強化することで、円滑なプロジェクト遂行を支援しています。新薬の上市準備においては、日本市場向けのプレローンチチーム(JP Pre-launch Team)を設置し、これを支援する機能横断型タスクフォースを編成することで、各機能間の連携を強化し、円滑な上市準備を推進しています。今後は、プロジェクト管理機能のさらなる強化、デュー・デリジェンス情報の事前整理、タスクフォースによる支援体制の明確化、並びにマイルストン進捗のモニタリング精度向上を図ります。さらに、経営レベルでの議論を継続し、医療制度や市場環境の変化に対応した持続的成長モデルへの転換を目指します。
リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
当社グループでは2021年に「デジタルビジョン2030」を作成しDXを推進しています。各部門・リージョンで様々な取組みを行ってきていますが、全体最適化の視点ではさらなる強化の余地があり、本来期待されている全社レベルでのOperational Transformation効果(生産性向上、迅速意思決定、パイプライン加速等)、Life-changingな価値創出に向けた取組みが十分に発揮されない恐れがあります。
主な対策
当社は2025年4月にChief Digital Transformation Officer(CDXO)を設置するとともに、全社軸でのDXを推進するODX(Operational and Digital Transformation)を新設し、DXを軸とした業務改革を加速するとともに、DXやAI等に関する専門人材や変革型リーダーの強化・育成、併せてIT/デジタル投資のガバナンス体制の整備を進めています。今後も会社戦略に沿った投資優先順位の設定や戦略テーマの定期見直しを通じて、全社的なDX効果の最大化を目指します。
リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
当社は、2024年に造血幹細胞遺伝子治療プラットフォームを有するOrchard Therapeutics社を買収し、本プラットフォームを活用した有望な治療法の開発、並びに当社が培ってきた創薬技術との融合による新規治療法の研究開発を、“Vision 2030 and Beyond:中長期構想”の中核に位置付けています。しかし、事業統合後の事業戦略の策定や組織ガバナンス体制の構築が計画どおりに進まない場合、期待していたグループシナジーを十分に発揮できない可能性があります。また、遺伝子細胞治療(Gene & Cell Therapy)領域において、事業環境の変化や各国の規制変更等への対応が不十分となる場合、上市済み製品の販売促進による成長や革新的開発品の創出が停滞し、“Vision 2030 and Beyond:中長期構想”の達成に影響を及ぼすおそれがあります。
主な対策
当社は、Orchard Therapeutics社の造血幹細胞遺伝子治療プラットフォームを活用し、OTL-200(欧州製品名:Libmeldy、米国製品名:Lenmeldy)の地域拡大、及びOTL-203、OTL-201などの開発推進に取組んでいます。これにより、Gene & Cell Therapy領域における事業基盤を強化し、収益の安定化を図ります。さらに、両社共同による研究開発戦略策定、投資判断等を行うガバナンス会議を整備し、Gene & Cell Therapy領域固有の課題や事業環境の変化に対して、迅速かつ的確な意思決定を可能とする体制を構築します。加えて、グループ全拠点の特性やケイパビリティを最大限活用した研究開発体制の整備、並びに専門人材の育成を推進します。
リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響
米国政権の政策変更(関税、薬価規制等)は当社グループに直接的影響を及ぼします。薬価最恵国待遇(MFN Drug Pricing)政策が法制化されれば、米国での価格引下げや戦略変更が避けられず、他国薬価設定にも波及します。医薬品への高関税導入は、米国向け製造戦略に大きな損害を与えるほか、価格転嫁は政治的リスクを伴います。
主な対策
当社は、関税影響に備えて米国関税タスクフォースを設置し、生産・SCM、財務経理、法務、渉外、市場アクセス、薬事等の機能横断連携を強化し、また製造拠点移転を含む供給体制再構築を計画しています。さらに、米国及び日本での活動を通じて政策関与を強化するとともに、米国の子会社がPhRMAに加盟し、政治的影響力の向上を図っています。今後も米国議会の動向監視を継続し、供給キャパシティの確保と契約再構築を進めることで政治的リスクの低減を目指します。
